弊社のこだわり

大切に守り続ける
染色の伝統

「注染」の発祥は、明治初年頃に始まったと言われています。「ヤカン」と呼ばれる容器に染料を汲み、型枠へ染料を流し込んで染色することから「注染」という名前が付きました。生地の両面を同じ色・柄に染められるのが大きな特徴のひとつで、多様な色彩と自然なグラデーションを用いた様々な絵柄の染色が可能です。柄は小紋柄の繊細さと大柄の華やかさを兼ね備えており、浴衣のような大きな衣類を仕立てるときは上下左右を対称に見せられるため、上質な印象も与えられます。

以前は長板中形の工法で着物が作られていましたが、高価で量産が出来ないため、以前より安価で量産出来る「注染」という技法が考案されました。昔からある手ぬぐい・浴衣・ダボシャツに加え、現在はストールや壁掛けなども「注染」によって染色されています。

弊社においては、特に浴衣の染色に力を注いできました。浴衣に使用される生地には、一般的に真岡木綿、岡生地と言われていますが、コーマ糸を使うコーマ生地(縦糸40番手、横糸30番手)と言う物もあり、生地風がなめらかで、肌さわりがよく、吸湿生が優れていて、色合いが綺麗なこの生地を使う問屋さんが多くなりました。

染める職人にとっては、糸が細く密集している生地にムラなく均等に染めるのはかなりの技術が必要になります。弊社では、先人の職人が習得した技術を継承し現代においても若い人達が作業に携わっております。技術力が評価され、他社では嫌がる多色染め、細川染め(形を2回、3回と使う)仕事等も頂いております。

多彩で奥深い注染の表現技術

他の染色技術と異なる注染の特徴として、裏面も表面と同じように美しく染色できるという点が挙げられます。そのため、表面が傷んできたら布を裏返して仕立て直し、もう一度きれいな状態で身に着けることができます。1枚の布を長く使えるため、親が昔使っていた浴衣を子どもが着ることも可能です。

また表面は経年により染料が程よく落ち、自然な風合いが生まれやすい傾向にあります。表面では「粋」な印象を与えられ、新品同様きれいに染まったままの裏面との対比も楽しめます。

裏表がない染色ができる理由は、注染ならではの糊型付法と染色法。染色する絵柄に合わせて彫った型枠の上から防染糊を塗り、塗り終わったら型枠を外して布を折り返し、また型枠の上から防染糊を塗る工程を繰り返します。この糊型付法だと布と布の間に必ず防染糊が挟まるため、裏表に同じ柄が現れます。

そして染色する際は、布と防染糊が何層にも折り重なった上から染料をゆっくりと注入。染料を布に均一に馴染ませたら、どこで折り返したかわからないほど自然な出来栄えになります。

注染で表現できる模様は、中柄が中心なのも特徴のひとつです。通常の染物の場合、手で持てる比較的小さなサイズの型紙を使うのが一般的。しかし注染は型紙を木枠で固定して糊付け・染色するため、よくある染物より大きく模様をデザインできます。

注染には、「サシワケ」という一度に複数の色を染められる技法があります。白もしくは紺の生地に2~3色使って染めたものが多く、自然なグラデーションと見た目の華やかさが魅力です。白い生地にサシワケを施したものを「白地差し分け」、紺色の生地の場合は「地染まり差し分け」と呼ぶこともあります。

注染とは 〜他の染物との違い・魅力〜
注染とは 〜他の染物との違い・魅力〜

注染以外の染物でグラデーションを作るときは、版画のように一色ずつ色を重ねるのが一般的。一色染めるごとに型紙を変えて糊を塗るため、自然な色の移り変わりの表現するのは大変です。

しかし注染は布に染料を注いで色を付けるため、染料同士がうまく混じり合い、色の変化がきれいに現れます。水流の青から水色、紅葉の赤からオレンジ・黄色など、さまざまな色合いのグラデーションを楽しめます。

浴衣の柄を上下・左右対称に表現できるのも注染ならではの特徴です。注染では、長さ約100cmの大きめの型紙で図案を構成します。型紙が長いぶん、浴衣用の布を染めるときに柄の切り替えが少なくて済みます。染色のときに布を折り返した部分が目立ちにくく、きれいに浴衣を仕立てられるのが注染の魅力です。

注染とは 〜他の染物との違い・魅力〜

注染の表現を現代に受け継ぐ

注染とは 〜他の染物との違い・魅力〜

裏表なく染色し、美しいグラデーションやシンメトリーを表現できるのが注染の魅力です。明治時代に生産が始まったころは、手ぬぐい・浴衣・暖簾・風呂敷といった日用品が作られていました。絵柄は伝統模様・浮世絵・季節の草花などが中心。当初は藍染めを施したものが中心でしたが、化学染料の登場により染色できる色の種類も増加しました。

現在は明治時代からの製品に加え、洋服・バッグ・ブックカバー・スタイなどにも注染が使われています。ライフスタイルの変化に合わせてさまざまな製品が続々と登場しており、注染で作られる物の種類は年々増えています。絵柄は、キャラクターものや現代アートを彷彿させるものも登場。注染は伝統を大切にしつつ、近年の新しい生活様式や流行を取り入れながら、進化を続けています。

注染は、江戸時代中期ごろに始まった染色技法「長板中形」の弱点を克服するような形で明治時代に開発されました。長板中形も、注染と同じく布の裏表を染める技法です。しかし防染糊で布を裏表からサンドイッチするように塗っていたため高度な技術が求められ、生産に時間が掛かってしまうのが難点でした。

そこで開発されたのが、注染。布を型枠に固定して防染糊を塗り、防染糊を塗ったら型枠を外し、布を折り返して再び型枠に固定する工程を繰り返し、糊付けの手間を大幅に軽減しました。布と防染糊を重ね終えたら上から染料を注いで一度に色を付けるため、染色の時間短縮にも効果を発揮。化学染料や機械の導入が進んでさらに生産量が増え、注染は全国的に広がりました。

注染の生産量が最盛期を迎えたのは、第二次世界大戦後の昭和20年代後半から30年代前半にかけて。その後は化学繊維やファストファッションなどの登場により、生産量も工場数も減少しました。近年は伝統技術を大切に受け継ぎつつ、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応しながら生産が続いています。

注染とは 〜他の染物との違い・魅力〜

注染に限らず、日本の伝統的な染物には、すべての工程を手作業で行っているものが数多くあり、注染もそのひとつです。温度や湿度によって染料の発色具合が変化しますから、つねに美しい染め物を仕上げるには職人の経験と勘が大切になります。

その結果として、世界にひとつとして同じものはない、素敵な製品が生み出されています。気温や天気といった周囲の環境に左右されるため、ひとつとして同じ仕上がりのものはありません。世界に一つしかない注染の製品を、まずは1つ持ってみてはいかがでしょうか。

注染ができるまで

注染は、染色前の生地を綺麗に整える干場、糊を乗せ型付を行う板場、染色を行う紺屋、水洗いで糊と余分な染料を落とす水元といった工程を経て制作されています。

注染の歴史

明治時代に生み出された染色技法、注染。150年以上の歴史があり、開発当初の作り方を基にしながら、使用する染料や機械などは時代に合わせて近代化を進めてきました。

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